バンパー広告の概要・定義
バンパー広告は短い動画広告フォーマットです。簡潔で印象に残るメッセージを使って、多くのユーザーにアピールし、ブランドの認知度を高めることを目的としています。バンパー広告の再生時間は 6 秒以内であり、視聴への影響を最小限に抑えながら、短いメッセージでユーザーにアピールできます。
一般的な配信の仕組みと特徴
YouTube動画コンテンツへオークション型(目標インプレッション課金)で配信されます。 6秒のスキップ不可広告でシンプルなメッセージにより幅広いユーザーに安価にリーチ・認知 させたい時に有効な手段です。 長めの動画広告を好まず広告をスキップしがちなユーザーにも配信されるアルゴリズムです。
6秒枠を活用する重要性
バンパー広告は、スキップが不可能なフォーマットでもあることから、ブランドの認知度向上に役立ちます。多くの場合、ほかのYouTube 広告のフォーマットと組み合わせて掲載するのが効果的です。モバイルでは移動中に動画を見るユーザーが多いため、この短い動画フォーマットが特に効果的です。
出典:バンパー広告キャンペーン – ディスプレイ&ビデオ 360 ヘルプ
バンパー広告のメリット
バンパー広告のメリットは大きく3つあります。
- 短い尺だからこそ得られる高い視聴完了率
- ブランドリフトや認知度向上への効果
- 他の広告形式(TrueViewなど)との役割分担と相乗効果
実際の事例を基に具体的な効果をご紹介します。
花王株式会社の掃除用品「クイックルワイパー ドライシート」では、YouTube 広告のうち、15 秒のスキップ可能なインストリーム広告では商品理解、6 秒のバンパー広告では購入意向の喚起などと定義しました。結果、動画視聴完了率は、Google の持つ消費財平均を約 13% 上回りました。さらにキャンペーン期間中、同商品の売り上げや購入者数も大きく成長したのです。
もちろんターゲティングの選定や動画クリエイティブ自体への工夫もなされた結果かと思いますが、他のYouTube広告フォーマットと組み合わせた結果、平均よりも高い成果を残すことができました。
出典:AI など最新動向を押さえた YouTube 広告活用事例
次は、ソフトバンク株式会社の新料金プラン「ペイトク」の事例です。
アプローチしたいのは 6,200 万人いる PayPay ユーザーですが、ユーザー全体に漏れなく届けるため、認知フェーズでは国民全員に知ってもらうことを目標に設定。テレビCM と YouTube 広告を併用しました。このフェーズの中核はテレビ CM が担いつつも、テレビ CM だけでは届かない層に、6 秒のバンパー広告を中心に YouTube 広告でリーチしました。
結果として、認知フェーズと内容理解フェーズいずれも視聴完了数は目標を達成しました。視聴完了単価も前年比でそれぞれ 28%、59% と大きく改善。Google のブランドリフト調査でも、認知は 20%、内容理解は 25% の相対リフト上昇が確認できました。
出典:Google AI で成果を最大化する YouTube 広告事例
最後は、すみだ水族館・京都水族館の事例です。
パンバー広告はこれまでご説明した通り、スキップされないことが特徴ですが、スキップできないことが、ユーザーにとって多少のストレスを感じさせてしまうとも言えます。
そのユーザーインサイトに着目をし、その気持ちを逆転させる動画クリエイティブを制作しました。
情熱大陸のナレーションでおなじみの窪田等さんを起用し、冒頭から「どうせスキップできないならペンギン」という言葉とともに、ゆったりとした「物語調」でペンギンたちのストーリーをシンプルかつ上質なトーンで提示できるコンテンツを作りました。
確かに聞きなじみのある声には、確かに耳が止まってしまいます。
結果として、「YouTubeの広告ぜんぶこれになってほしい」「唯一ジャマだと思わなかった広告」などSNS上で多くの好意的なコメントが寄せられ、実際の来館やサイトの訪問を報告する投稿が多数見受けられました。
このような一般ユーザーによる口コミの効果もあり、認知母数拡大を図ることができました。
出典:YOUTUBE WORKS AWARDS JAPAN 2024 | Breakthrough Advertiser 部門:どうせスキップできない広告ならペンギンの話(オリックス不動産株式会社)
バンパー広告を運用する前に知っておきたいポイント
目標設定:認知度向上や購入促進などの明確化
どのフォーマットにも言えることですが、まずは目標設定が重要です。バンパー広告の場合は、多くの場合、認知度の向上が目的となるでしょう。
クリエイティブ制作のコツ:6秒に収めるための要点と工夫
私なりに日々動画制作に関わる中で解釈した「刺さるクリエイティブとは何か」を簡単に説明します。
①指を思わず止めてしまう「0秒アテンション」
・0秒目に、縦長用のレイアウトでインパクトのある絵を映す
・ボディーコピーのような長い言葉は、短く切って次々と表示する
・音楽は動画のトーンを決定づける上でより一層重要に、テンポ感があり、ストーリー展開を補完するものを選択
②広告色を抑えて自然に楽しめるような「オーガニック感」
・ブランドや商品を出す際は、コンテンツとマッチした自然な流れを
・カットやテロップを細かく切り替え、繰り返しの視聴を促す
③その後に繋げる「行動クリエイション」
・商品購入やLPへの遷移などその後の行動を促す
スキップしやすい環境のショート動画では、こうした工夫によって指を止めてもらい、短い時間で人の気持ちを動かす必要があります。「楽しんでもらい、結果として効果につなげる」というスタンスでの広告クリエイティブの制作が大切です。
特に、バンパー広告の場合は6秒と非常に短い時間になるので、インパクトに残る「音楽」や「リズム」が特に重要かもしれません。
ターゲット選定と配信設定の基本
YouTube広告のターゲティングには大きく分けると2つに分類することができます。
Googleの1st Party Dataによってブランドにとって最適な オーディエンスを見つける「オーディエンスターゲティング」と多様なコンテンツからブランドにとって最適な掲載場所を見つける「コンテンツターゲティング」です。
オーディエンスターゲティングを活用すると、ユーザーのデータを最適に活用し、オーディエンスと Google 広告とのあらゆる接点でアプローチが可能になります。
Google オーディエンスは、インタレストとインテントの2つで構成されます。
インタレストの仕組みは、インセンティブ付きのアンケートでユーザーの興味関心を匿名でヒアリングし、機械学習でユーザーの習慣をスケールさせ、興味関心のカテゴリーごとにパッケージ化させます。インタレストにもいくつか種類があります。
①アフィニティ:シグナルに基づいて分類された あらかじめ規定された特定の興味関心を持ったユーザー群
②カスタムアフィニティ:シグナルに基づいてオリジナルで指定・カスタマイズ した特定の興味関心を持ったユーザー群
③コンシューマーパターン:位置情報などのシグナルに基づいて分類されたユーザーの消費行動区分 を使った特定のユーザー群
④デモグラフィック:Googleアカウントの情報や、 Googleサービス上での行動に基づいて推測されるユーザーの属性情報を使った特定のユーザー群
インテントの仕組みは、ユーザーのブラウジングに基づいてインテンションスコアを付与します。具体的には、匿名のユーザーが「ゲーム」「スマホ」というキーワードを検索し、「テクノロジーレビュー」のwebカテゴリーのサイトを閲覧したら、89のスコアを付与し(数値は適当)、分類します。
その後はインタレストと同様です。
インテントにもいくつか種類があり、
①購入意向が強い:購入につながるインテント に基づいて分類された特定のユーザー群
②リマーケティング:特定のウェブサイトまたはアプリにアクセス したことのあるユーザー群
③カスタムインテント:特定の検索を行ったユーザー群(自由に指定可能)
④カスタマーマッチ:メールアドレスや電話番号など、情報として入力されたCRM データに基づいた既存顧客群
⑤ライフイベント:ライフイベントに関するシグナル に基づいて分類された特定のユーザー群
コンテンツターゲティングを活用するとユーザーが高い興味を持つコンテンツにアプローチが可能です。
Google のシステムでディスプレイ ネットワークのすべてのウェブページのコンテンツが分析され、そのメインテーマが割り出されます。また、ターゲットとする言語と地域、ページを表示しているユーザーの最近の閲覧履歴といったさまざまな要素とウェブページのテーマが比較され、広告を掲載するページが決まります。
コンテンツターゲティングもいくつか種類があります。
①トピック:シグナルに基づいて分類された あらかじめ規定されたページ群
②プレースメント:チャンネル、動画、アプリ、ウェブサイト、サイト内の 特定のページ
③キーワード:特定のキーワードに関連するウェブページ群(アプリ、動画も含められ、自由に指定可能)
バンパー広告の設定・運用手順
キャンペーン作成の具体的なフロー
では実際にパンバー広告のキャンペーン作成の手順をご紹介します。
詳細については、YouTube広告の出し方を専門家が徹底解説! | ScaleX
こちらに詳しくまとまっているので、こちらを参考にしてください。
キャンペーンの設定では主に、予算や期間、入札戦略、YouTubeの中でも、どのフォーマットを活用するかを決定します。
キャンペーンの目的を選択します。
多くの場合、ブランド認知度と比較検討になるのではないでしょうか。
何を選べばいいか分からない場合は「目標を指定せずにキャンペーンを作成する」を選択しましょう。
ここで仮に選択を変えても、最終的に配信できる方法に違いはありませんので、安心してください。
YouTubeを配信したいので、「動画」を選択しましょう。
配信の目的に沿って、キャンペーンのサブタイプを選択します。
バンパー広告を活用する場合は、「動画のリーチ」をサブタイプとして選択します。
その後、目標選択で「効率的なリーチ」を選択します。
「効率的なリーチ」を選択しないと、次の広告フォーマットの項目で「バンパー広告」を選べないので注意が必要です。
また(バンパー広告、スキップ可能)と記載がありますが、バンパー広告は長さが 6 秒で、スキップはできません。スキップ可能なインストリーム広告は長さが 7 秒以上ですので、動画を6秒以下で作成すれば、バンパー広告のみの出稿となります。
このような表示になっている背景は、おそらく直近のYouTube広告の考え方として、複数のいろんなフォーマットを使うことが推奨されているからと考えられます。
ここからは予算の設定です。パンバー広告以外の手順と変わりはありません。
またネットワークの箇所にて、Googleパートナーにチェックを入れたままにすると、YouTube以外にも広告表示がなされることとなります。
YouTubeにだけ配信する予定だったのに…など、事故につながる原因となりますので要注意です。
成果の測定方法
バンパー広告は多くの場合、リーチを広げる目的で活用されるケースが多いので、
成果とする地点は「インプレッション」「インプレッション単価」が適切です。
とはいえ、ビジネスのゴールはどこまでいっても最終的に売上や利益になるので、ビュースルーコンバージョンの指標をみて、購入やお問い合わせに寄与しているかを確認したり、パンバー広告を始めた前後で、指名検索数の伸びも見ておくとよいでしょう。
バンパー広告の今後の展望とまとめ
マーケティングトレンドとしての短尺動画広告の可能性は、今後も広がることになるでしょう。だからといって、バンパー広告のみを活用するというよりは、記事前半の事例紹介でも例に挙げたように、様々な広告メニューやフォーマットを活用して、ユーザーと接触を図る方がよいと考えられています。また、その考え方に合わせてGoogleも、できるだけ複数のフォーマットを活用するようなアップデートをしています。
様々なフォーマットを理解し、組み合わせて活用をすることで、ビジネスの目的を達成できるようにYouTube広告を利用してみましょう。